五菱会ヤミ金事件
五代目山口組・五菱会(現六代目山口組・六代目清水一家)系の史上最大規模の闇金融犯罪組織が、犯罪収益を海外でマネーロンダリング(資金洗浄)に及んでいた事件。警視庁、愛知県警、広島県警、福島県警の合同捜査本部が摘発した。
概要
- 五菱会は、闇金融による効率的な収益を得る為、複数の店舗を統括する「センター」を設置して顧客情報を管理しており、最盛期には1,000店舗、年間収益1,000億円に上った。
- 2002年10月、美尾組が五菱会に改称された頃、美尾組幹部の梶山進がヤミ金運営に専念し始めた。この時期の五菱会は山口組に最大の資金源を提供していたとも言われた。
- 手口は、全国の多重債務者リストを基に多重債務者にダイレクトメールなどを送り、無担保融資を勧誘し、融資を申し込んできた者の銀行口座に現金を振り込み、返済も口座振込みとして、客と顔を合わせないするというシステムによるもの。
- 顧客の返済期限が近づくと、別の五菱会系グループが新たな融資を持ちかけ客の借金を膨らませていった。
- 後に梶山進が自民党の亀井静香政調会長に献金していた事実が発覚し、問題となったこともある。
五菱会系闇金融グループの組織や手口
- 多重債務者リストをもとに「ブラックOK」などと謳ったダイレクトメールを送付。
- グループはAR、FC、TO、SIなどといったグループの社長のイニシャルで管理。
グループの傘下店舗は社長のイニシャルの次に数字の連番で管理されていた。
- 事件化された店舗などは「トカゲの尻尾切り」で、上層部にたどり着くのは困難。
組織は多重階層のピラミッド形態
五菱会
↓
梶山進
↓
七人衆
↓
グループ長(最大で27グループ)
↓
センター(グループ内の顧客情報を収集)
↓
店舗(店長、述べ1,000店舗)
↓
従業員
↓
顧客4万人以上
強引な取り立て・追い込みの実態
- 店長・店員は毎日入金状況をチェック、3時までに入金のない被害者には催促の電話をして4時までに電信為替で入金するよう要求。
「身内や会社に電話するぞ」「今から家に行くから待ってろ!」「旦那に言うぞ!親兄弟に泣きつけ!」などと恫喝。
- 身内や会社にも押しかけ、金が取れそうだと判断すると、実際の借入額より多い額を徴収。
- 被害者の自宅や関係先に電報で督促。
- 被害者は他の闇金から借り入れたり、親族・友人の援助を受け人間関係も崩壊し、自殺未遂する者も続出した。
摘発
- 2003年1月、警視庁、愛知県警、広島県警、福島県警の合同捜査本部は、東京都新宿区にある貸金業「アームズ」の経営者(五菱会傘下の組員)を逮捕した。
合同捜査本部はその後の捜査から、2001年7月から2003年4月まで、「ヤミ金の帝王」と呼ばれた梶山進が闇金融の収益で購入した約5,000万円相当の金融債券を、高木康男が数回に渡って受取ったことを確認。
- 同年8月、合同捜査本部が、梶山進を出資法違反の疑いで逮捕し、五菱会本部事務所などを家宅捜索した。
- 同年10月、五菱会が闇金融で稼いだ金を山口組に上納しているとして、五代目山口組総本部を家宅捜索した。
- 同年11月、高木康男を組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)違反で逮捕した。
海外への資金隠匿
- 五菱会は97億円もの収益を国内外に隠匿、半分以上がスイスのチューリヒにあるクレディ・スイス銀行本店の梶山進名義の2口座にプールされていた。
- 送金ルートは日本だけでなく、米国(ニューヨーク)、香港、シンガポールの少なくとも4ルート。
- 口座の所有者であった梶山進は、スイスで資金を洗浄し、再びクリーンなお金として日本へ戻すつもりだったとみられている。
- 2004年以降、被害者計約180人が梶山進に損害賠償を求め東京、松山両地裁に集団提訴。
- スイス検察当局が、資金に不審な動きが見られたとして、残高51億円の口座を凍結。
最終的に差し押さえられた金額は58億円に上り、これをスイスと日本で折半することで調整。
スイスから返還された29億円は、五菱会系ヤミ金の被害者を対象として被害回復給付金として配分を開始。
- 2008年7月、東京地検が2009年1月26日を申請期限として、被害者からの申請を受け付け、6899人の申請に対して5496人について被害回復給付金支給法に基づき、受給資格があると裁定。
このうち所在不明などの6人を除く5490人が支給対象とし、地検が認定した総被害額は約161億1,300万円となった。
- スイスから返還された犯罪収益金29億円の分配を始め、支給総額は約23億7,800万円。被害額の約14.7%が分配された。
五菱会ヤミ金融事件の最高裁判決
- 2003年、ヤミ金融対策法が成立、金利が年109.5パーセントを超える貸付契約無効の規定(現行貸金業法42条)を導入も、「元本の返済は不要である」ことを法律上、明記されなかったため、これによって元本については返済義務があるとの誤解が生じることが懸念された。
現場の警察官が「借りたものは返すべきだ」などと間違った対応をとるなど、その解釈の不徹底さが闇金融の撲滅を推し進める上で大きな障害となる。
- 東京高裁は、梶山進に懲役6年6月、罰金3千万円の判決を言い渡した。ほかの2人と合わせ、海外に隠された計約97億円の追徴も認められた。
- この事件を契機に2006年6月、没収・追徴された犯罪収益を国が被害者に分配する「被害回復給付金支給法」などが成立。
- 2008年6月10日、最高裁は五菱会事件で、被害者が闇金融に支払った金銭の全額について損害賠償請求を認め、闇金融から被害者への貸付金額は、損害額から控除しないとの判決を言い渡した。
闇金融の貸付金が民法708条に規定する不法原因給付に該当する以上、「ヤミ金が「貸付金元本」はおよそ法的保護に値せず、いかなる名目であれ被害者に金銭の支払を要求する権利はない。損益相殺の対象にもならない」ということが最高裁によっても明らかにされた。
詰まる所、「借りた金を返せ」という業者の言い分は通用しないと明言された。
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